【第9回 PERCHスクール 】「もりさきカップ2023 上映会&表彰式」が開催されました。
第9回のPERCHスクールでは「もりさきカップ2023 上映会&表彰式」が開催されました。
第6回 PERCHスクールの際に開催が発表された「もりさきカップ(※)」。
第6回に続き、講師は株式会社ウパンの守崎梢子さんにご登壇いただきます。
※1曲の音楽をテーマに、各々の解釈で映像を制作するとどうなるのか?という実験の場。
今回はPERCHメンバーなど関係者から寄せられた映像作品をスクール参加者の皆さんと一緒に視聴しながら、講師がリアルタイムで講評していく特別な会となりました。参加作品の紹介から賞を決定するまでの様子を、臨場感溢れる形でレポートします!
映像作品のテーマ曲は、昭和世代にはお馴染み!『まんが日本昔ばなし』のエンディング『にんげんっていいな』。世代が違う筆者にとっては聞き馴染みがなく新鮮な選曲です。使用するフレーズに動画の長さを限定して(30秒)募集しましたが、一体どんな作品が集っているのでしょうか。
参加された方々には豪華景品あり!
トップバッターは植木亜季子さん。
タイトルは『動く絵本みたいな世界観』
カラフルな色合いと丸字のフォントが曲の明るく朗らかな雰囲気を表現
ポップなリリックビデオに講師も思わず「点数入れちゃうほどすごい好き」と大絶賛!植木さんによると全て、Adobe After Effects(※)で制作したのだそうです。
まさに飛び出す絵本が動き出しているようで、見ているだけでワクワクする作品です。
※映像のデジタル合成やモーション・グラフィックス、タイトル制作などを目的としたソフトウェア
エントリーNo.2 梅ノ木文化計畫の木原進さん。
タイトルは『帰りつつ帰らない』
開始早々、ニコラス・ケイジさんがプリントされたスパンコールクッションを使って、ひたすらニコラス・ケイジの顔をチラつかせる不思議な映像が続きます。
ちなみにこのクッション、気になって調べてみると色違いまであり、アメリカで爆売れしたらしい。
後半になるにつれスピードが早くなっていく
合間にはバイクが落っこちる様子が繰り返され、「でんでんでんぐりかえってバイバイバイ」という歌詞にあわせてライダーが転げ落ちる、笑いと心配が交互に押し寄せてくる映像。
例のシーン。ポツンと転がったバイクが悲しみを誘います…
じわじわと笑いが込み上げてくる一同。オンライン視聴者のお子さんにも大ウケです。
木原さんは、歌詞の「帰る」という言葉に着目し、大好きな大道芸人のネタを引用して、行ったり来たりを繰り返す「帰りつつも帰らない」という世界観を作り上げたと話します。ちょっと粗めの動画をチョイスしたところに心惹かれます。たった2つの映像を組み合わせたシンプルな構成ではありますが、音ハメよし、オチまでよしと発想に捻りを利かせたユニークな作品でした。
エントリーNo.3 主催のウパンスタッフの佐藤凪さん。
タイトルは『にんげんって本当にいいものだろうか?』
ずらりと学校へ流れていく学生。卒業をして就職という道へ。終盤では一連を嘲笑ったかのような、うさぎの様子が映し出されます。
佐藤さんは「曲を聴いているうちに、“にんげんっていいな”というフレーズが皮肉に聞こえてしまった」と話します。ピクトグラムのような一律なイラストがシンプルかつ、細かな描写とリアリティが溢れた流れに参加者一同、拍手喝采!社会へのメッセージ性が強い素晴らしい作品です。
エントリーNo.4 ウパンさんにインターンでいらしている萩元結香さん。
タイトルは『曲は古いのにスマホは新しく。でもやってるゲームは古い。というギャップのギャップです。』
「ゲーム」をコンセプトに流れる歌詞に合わせて、ほかほかごはんを食べる『ごはん』といったコマンド選択が表示。
萩本さんは「クリエイターにとって欠かせない”せいさく”というコマンドがあったり、文字化けされたセリフも、元の文字へ変換すると歌詞通りになってる」と話しており、細部にこだわった箇所はつい何度も見返したくなります。
最終的に「にげる」というコマンドを選択してゲームを終了しますが、画面上にいたはずの敵キャラクターが現実世界にも・・・というホラーな展開。これまでの作品とはまた違い、明るい曲調にダークな雰囲気を纏っているのもタイトルにある「ギャップ」が感じられます。
エントリーNo.5 講師の守崎梢子さんもエントリー。
タイトルは『〇〇なにんげんっていいな』
筆者お気に入りのウパンさんのキャラクター。
ウパンのイメージキャラクターを自身に例え、いつものナイトルーティーンを表現。
止まらない時間に追われながらも「やばい案件」を片手に、そばにあったスマホを手に取ります。
インスタグラムで見かけるページの数々。
ゆるっとしたキャラクターが「何かを持っている人間はいいな」とひたすら投稿を眺める姿はまさにリアル。守崎さん曰く、「人間っていいな」というフレーズに嫉妬の感情が現れてきてしまったのだとか・・・(笑)
ため息をつきながらフェードアウト。
気持ちが感じ取りやすいシンプルな作品。手書きのやわらかな空間に現実を入れ込むスタイルは強く印象に残りました。
エントリーNo.6 映像編集の栗原洋平さん。
タイトルは『間(隔てる空間、或いは、連続する時間)』
栗原さんのお子様と幼少期の奥様の様子が交互に映し出される映像。しっかり日本昔ばなしのエンディングテーマとして採用された同年代の映像が使用されています。過去と現在が織り交ざる歴史が感じられる映像です。途中で映ったフィルムを映すビューア―はあえて映像に映したとのことで、栗原さんのこだわりを感じられますね。初めから終わりまで、どのシーンも温かみの溢れる、視聴者の気持ちが和やかになる作品でした。
最後は2022年のもりさきカップにもご参加された浦木三郎さん。
タイトルは『株式会社人間っていいな』
映像を流す前にご本人からのメッセージで
「お疲れさまです。『株式会社にんげんっていいな』のイメージ動画を送ります。」
と、なんとクライアントへのメール形式で届きました。この時点で世界観を作り上げていくとは!さすがです・・・
テレビ観賞中の男性とテレビ内の動物たち
「ほかほかごはん」を食べてにっこりな少年
夕暮れ時に帰っていく子どもたち
「ぼくも帰ろ お家へ帰ろ」という歌詞に合わせて子どもたちが一斉に帰っていく様子が描かれています。
ご夫婦揃って観賞。ロゴとタイトルから解釈する参加者
最後は「でんでんでんぐりかえってバイバイバイ」の歌詞とともに会社名とロゴで締めるプロモーションビデオ。視聴後は(人間と動物の)どちらの視点で描かれた映像なのか、視聴者の皆さんと意見が述べられました。
筆者的には謎と情報量の多さがダントツでとてもお気に入り。映像のテンポといいリズム感といい、考察しがいがありそうで何度も見返したくなる作品でした。
楽しい時間は過ぎ、個性豊かな7作品が出揃いました。
さあ、いよいよ投票と各賞が決定する結果発表へ!1人3票まで自由に投票する形式で、どれも素敵な作品であるがゆえに選ぶのは悩みに悩みます…。
3位・・・ エントリーNo.1 植木亜季子さん『動く絵本みたいな世界観』
投票コメント:
「全体的にカラフルで、子どもが歌うふわふわとした雰囲気が伝わってきました。」
「ストレートなとこが良かったです。とても綺麗でそのまま使えそう」
「曲の世界観に1番合っていると思います!」
「曲調にバッチリ!色使いがすてき」
2位・・・ エントリーNo.7 浦木三郎さん『株式会社人間っていいな』
投票コメント:
「人間の笑顔に惹かれると同時に引きました。」
「オチがバシッと付いてるの好きです。笑いました。」
「毎日生きるか死ぬかの危険にさらされている野生の動物より人間は平和に生きていられることが幸せなんだなということが感じられる動画でした」
「テレビを眺めている人間が、いずれは動物の反乱に遭うのでは……!?と、最後のロゴも併せて深読みしたくなりました。会社PVと見せかけて、人間社会に警鐘を鳴らしているようにも読み取れる興味深い作品でした!」
特別賞(これはひどいで賞)・・・エントリーNo.2 木原進さん『帰りつつ帰らない』
ニコラス・ケイジさんのインパクトは大きかったようです。特別賞を狙っていたとのことでお見事です!
投票コメント:
「最後爆発してたらもっとよかったです!」
「ニコラスケイジの笑顔に一票です!」
「今夜の夢にニコラスケイジが出てきそうです」
「単純に面白い」
1位・・・ エントリーNo3 佐藤凪さん『にんげんって本当にいいものだろうか?』
投票コメント:
「個性的な色の人々が学校に入ってから出る頃には同じような人にまとめられてでていく様子だったり、単純作業を強いられて生きる意味を見失っているような人がいたり、描写が細かくて深いと思いました」
「ピクトグラムの使い方やテーマに輪るピングドラム」というアニメ作品を想起しました。」
「人間らしさって何だろうと考えさせられました。工場で働くのってとても人間らしいって思うんだけど、そうじゃないのか??」
「テーマの穿った見方の感じが好きです。映像は最初のバラバラ入って、整列して出ていくところとか好きです。」
作品の制作技法には、素材を引用・使用して組み合わせる映像や、素材そのものを撮影・制作したり、作品に添えたメッセージから世界観を作り上げるなど、様々なものがありました。今回の会に参加して、「作品制作に決まった技法や方法は何一つないのだ」ということをあらためて知りました。そして、約30秒の決められたフレーズだけなのに、それぞれ楽曲の捉え方・解釈が異なり、一人ひとりが全く違ったテイストの作品を作り上げていたことには非常に驚きです。
作り手の考えや思いが詰め込まれた作品づくりは奥深いものだと感じたとともに、音楽表現はさまざまだということをより実感しました。
第6回のスクールに引き続き、音楽と映像の無限の可能性が感じられる、楽しく学びとなるスクールをありがとうございました!
次回のもりさきカップ開催も楽しみです!
(MOEKA)