PERCHは“物作りを楽しむ人”が集まるところ
他の机からは少し離れたパーティションは、PERCHの最初の入居者となった株式会社インブランクがオフィスを構える一画です。WEBサイト制作を中心として、さまざまなクリエーティブデザイン制作を手がけている同社の、代表取締役・柴田慈得さんが、1日8時間近くを過ごす仕事場を居心地のいい空間にするために欠かせないと語るのは「ラジオの音」。柴田さんが働き始めた最初のオフィスは一日中J-WAVEの番組が流れる環境で、今でもラジオの音が聞こえると仕事スイッチが入るのだとか。
柴田さんからはPERCHを知ったきっかけ、そしてまだ完成前だった場所への入居を決めた理由から伺いました。
そこは、入居者ありきの空間だった
─PERCHの1人目の入居者と伺いましたが、どのようにPERCHを知ったのですか?
柴田:PERCHの計画が始まったころ、まだ設計中の段階だったと思います。当時、一緒にお仕事していたベクターデザインの社員の方に、「PERCHというシェアオフィスができるから、来ないか」とお声がけいただいたのがきっかけです。そのころは、ある会社のオフィスに間借りする形で仕事場を設けていて、ちょっと窮屈というか、居心地がイマイチだったんですね。そのことを知っていて、声をかけてくれたんじゃないかと思います。
一日中ラジオをかけながら仕事しているのもご存知でしたので、「あの会社、いつもラジオかけてるよね。このちょっと離れたスペースなら音も出せるから、来てくれるんじゃないか?」みたいな感じで。それで、私が入居すると決まってから、ラジオを流しながら仕事できるスペースを作ってくれたというわけです。
─柴田さんたちのために、あらかじめ設えられた場所なのですね。それがPERCHに来る理由に?
柴田:そうですね。これから造作するタイミングでしたから、囲われた空間にしてもらって。また、「誰でもウエルカムなオープンなシェアハウスではない」というコンセプトだったから、というのもあります。もしオープンなシェアオフィスだったら、選択はちょっと違ったかもしれないですね。代々木という場所だったのも大きいかな。新宿とか原宿と比べるとせわしなくないというか、のんびりしていますし。代々木は食べるところもたくさんあって、昔ながらのお店もちゃんと残っている一方で、ほどよく“新陳代謝”もあるのでお店が入れ替わって、いろんなものを食べられるっていう魅力もありましたね。
年齢を重ね「そのもの本来の役目」に目が向くように
柴田さんが最近はまっているのが「スケボー」。それまで、まったくスケボーの経験がなかったものの、40歳を過ぎて自己流で始めたといいます。「何するわけでもないですよ。ただずっと往復して、ツーツーって滑ってるだけなんですけど」と、楽しそうに語ってくれます。
コレクションから“掘り返した”スケートボード
─なぜまた、スケボーを始められたのですか?
柴田:確かに、そうなんですよね。僕も思います。40歳を過ぎてスケボーを始めるって、何で?って(笑)。若いころそれまでスケボーにはまったく縁がなかったんです。一応、スポーツは、ダイエットのためにランニングを始めて、2年ほど続けていました。ある程度痩せられて。若いころに運動していたわけでもないし、ランニングの前に何かしていたわけでもないし、体を動かすのはどちらかといえば、好きではなかったんだけど、ランニングは続けられたんですね。そうしているうちに飽きてきて、なんとなく、昔やってみたかったスケボーを掘り返したんです。
─掘り返した??
柴田:そう、まさに掘り返したんです。スターウォーズのR2-D2がすごく好きで、オフィスの机の上にもグッズがいっぱいあるんですけど。家にもたくさんありまして。コレクションの1つに、裏にR2-D2のイラストが描かれたスケボーがあったんです。コレクションとして飾って眺めるのも悪くはないのですが、スケボーとして見たら機能していないから意味がないなって思い立って。「これ、スケボーとして使いたい」と思ったんです。
─コレクションのなかから掘り返して、スケボーとして使い始めたわけですね。
柴田:子どものときは「とっておきたい、そのまま眺めていたい」という気持ちのほうが強かったですけど、ある程度年齢を重ねてきて「そのもの本来の役目を果たすように使いたい」と思うようになってきたのかな。まあ、スケボーをしているといってもまだ半年ぐらいで、休日や週末に静かにやっているくらいですが。
─「そのもの本来の役目」を見つめるという意識はお仕事にも関わっているのでは?
柴田:仕事で作るWEBサイトやデザインも、鑑賞の対象になるものがあってもいいのですが、本来はクリックしたり、動かしたり、思いどおりに情報が見つかったりすることで、役に立つものですから、眺めるだけでなく触って使ってほしいですよね。だから、そういうところは仕事のうえでも常に意識しているかもしれませんね。
和気藹々で、互いに与える刺激が強い場所
ローンチ当初からPERCHを見続けてきた柴田さん。その目からPERCHはどんな場所に見えているのでしょうか? そして、PERCHのメンバーに共通するところとは?
メンバーに共通するのは「物作り」を楽しむ人たち
─柴田さんから見たPERCHは、どんな人が集まる、どんな場所でしょうか?
柴田:PERCHが新宿や原宿だったら……という話をしましたが、PERCHのコンセプト自体は、誰でもウエルカムなオープンなシェアハウスではないので、新宿にあったとしても、まったく知らない人がガヤガヤいるような場所にはならないかもしれないですね。私と同じように知り合いからの紹介で入っている方ばかりですから。PERCHの本来の役目というのも、そこにあるような気がします。
最初のころと今とでメンバーは替わっているのですが、雰囲気はあまり変わらないですね。原木を持ち込んで生ハム食べ放題のパーティーをしたり、PERCHで仕事終わりに軽く飲んだり、みんな和気藹々としています。どんな場所かというと、個人でクリエーティブな仕事をされている方が多いので、お互いに与える刺激が強い場所だと思います。PERCHの皆さんに共通するのは「物を作ることを楽しんでいる人たち」というところかな。同じように、物作りを楽しむ仕事をしていて、違う分野のクリエーティビティーから刺激を受けたいと思う人が、PERCHに向いているんじゃないかと思いますね。
インブランクさんの手がけた仕事の1つが、PERCHの最寄り駅・代々木駅周辺の徒歩圏内に点在する、おいしいランチやディナーを楽しめるお店を集めた「代々木うまいものMAP」。MAPの公開当初はベクターデザインのメンバーがレビューしていましたが、新しいお店を目ざとく見つける柴田さん達にレビューも依頼したところ、おいしいお店の情報が続々とUPされるようになりました。PERCHメンバーのみならず、「代々木 ランチ」でググる人たちにも欠かせない情報源になっているとか。“本来の役目”を追求する柴田さんならではのレビューは必見です。
株式会社インブランク
企業サイトを中心に、ポータル、EC、ランディングページ、スマートフォンサイトまで何でもこなすWeb制作会社。
このPERCHのオフィシャルサイトも同社が手がけたもの!
デザインの幅も広く、発注者のコダワリやワガママにもしなやかに対応。「自分たちのやりたい方向性やデザインテイストをうまく伝えられない」そんな時も、丁寧に希望を汲み取って仕上げてくれます。おっとり、穏やかなスタッフさん達で、何かと相談しやすいのも魅力。
取材編集/常山 剛